天武天皇により「諸国家毎に仏舎をつくり、仏像及び教を置き、礼拝せよ」との詔令があり、各家にお仏壇を置くようになりました。 法隆寺にある「玉虫厨子」が日本の仏壇のルーツ的存在です。 お仏壇とは文字通り仏様をおまつりする「壇」のことです。壇とは一段高い場所、すなわち仏様がお住まいになる理想的な世界「須弥山(須彌山:しゅみさん)」を意味します。この須弥山をかたどっているのが、寺院の須弥壇のことです。 お仏壇の中心に安置されているのは、信仰する宗旨のご本尊様です。広い意味では、礼拝のために設けられた空間すべてがお仏壇と呼ぶこともできます。
お仏壇には長い歴史を私たちと共に生きてきました。 変化し続ける現代社会において、お仏壇の持つ意味を考えてみましょう。
家庭のお仏壇は、寺院にあるお仏壇(内陣)を小型にして、厨子と一体化して箱型にしたものです。ですから、お仏壇とは家の中のお寺のような存在です。造作が複雑になっているのは、お寺の中(内陣)をミニチュア化しているからです。彫刻や文様蒔絵は、経典や高祖のエピソードが表現されています。
本来、信仰に基づいて始まったお仏壇ですが、今日のお仏壇は宗教的な祭壇というよりも、「亡き家族の象徴」としての意味合いが強いのではないでしょうか。あるいはご先祖への敬意と感謝を象徴するものとも言えるでしょう。
愛する親族を失う悲しみは、例えようもありません。この悲しみを乗り越えるために、心を癒すことは「グリーフケア」と呼ばれます。現代ではようやく、このグリーフケアの重要性が認識されてきました。お仏壇を前に、亡くなった親族と心の中で会話することで、お互いの関係を見つめ直すことができます。そして、これが心の悲しみを癒すことに繋がっていくのです。
お仏壇に手を合わせることは、ご先祖への 「感謝の気持ちを次世代に教える 」ことにつながります。また人間の死を考えるきっかけでもあります。核家族化が進み、寝食をともにした家族の死を体験する機会は少なくなっています。そのような環境で育った子供たちは人間の命をどのようにとらえるのでしょうか。 「感謝の気持ちを表し、命を考えるきっかけをつくる 」それが現代におけるお仏壇の重要な役割なのです。